通信制高校

通信制高校は人生終わり?卒業した9万人が、そのあとどうなったか

通信制高校で人生は終わらない。分かれ道の前に立つ親子のイラストにタイトルを載せたアイキャッチ
杉野 一樹

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「通信制高校 人生終わり」で検索して、ここに来た人へ。先に答えを書きます。

終わりません。理由は数字で確かめられます。

この記事は短い文で書いてあります。疲れていたら、最初の節だけ読んでください。

この記事で分かること
  • 通信制を卒業した91,809人のうち、約74%は大学・専門学校・就職に進んでいる
  • 「終わり」の正体は、進路を決めないまま卒業する26.2%に入ること。その割合は10年で41%から26%に減った
  • 分かれ目は学校の種類ではなく、在学中の3つの準備
学校に行かなくなったあとの4つの段階。いま、学び直し、進路、その先。この記事は進路の段階
学校に行かなくなったあとの4つの段階。この記事は「進路」と「その先」の話です。

先に答え:通信制高校で人生は終わらない

通信制高校を卒業した人が、そのあとどこへ進んだか。文部科学省の学校基本調査から、2025年3月に卒業した人を数えた数字です。

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卒業したあと 人数 割合
大学・短大など26,301人28.6%
専門学校21,013人22.9%
ほかの学校・職業訓練2,526人2.8%
就職17,893人19.5%
進学も就職も決めないまま卒業24,076人26.2%
合計91,809人100%

約74%が、進学か就職をして卒業しています。残りの26.2%は、進路を決めないまま卒業しています。

この3割には、浪人して勉強を続けている人もいます。バイトをしながら次を探している人もいます。全員が「何もしていない」わけではありません。

それでも、この3割に入らないための準備はあります。それが、この記事の中身です。

「終わり」の中身は、10年で小さくなっている

進路を決めないまま卒業する人の割合は、2015年度は41.1%でした。

最初の表の卒業生(2024年度の卒業)では、26.2%です。

10年で15ポイント減りました。「通信制を出ても何もない」と言われた時代の数字は、もう当てはまりません。

全日制との差はどこにあるか

同じ数え方で比べます。全日制・定時制は62.6%が大学等に進みます。通信制は28.6%です。

はっきり差があるのは、ここです。

就職と専門学校は、通信制のほうが割合として多くなっています。「通信制だと何もできない」は、数字の上では合っていません。

この数字は、国の概要には載っていない

文部科学省は毎年、学校基本調査の結果をまとめた概要を出します。「大学進学率61.4%」とニュースになる数字は、その表のものです。

ただし、その表の見出しは「高等学校(全日制・定時制)等卒業者」です。通信制は、この表に入っていません。

通信制の進路は、同じ調査の別の表にあります。表番号297「状況別卒業者数」です。

概要には出てこないので、統計サイトで表を開かないと見られません。この記事の数字は、そこから取りました。

「通信制のその後がよく分からない」と感じるのは、気のせいではありません。数字はありますが、目に入る場所には置かれていないのです。

公立と私立で、12ポイント違う

同じ通信制でも、公立と私立で数字が変わります。

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区分 大学等へ進んだ割合 決めないまま卒業
公立(9,443人)17.1%36.9%
私立(82,366人)30.0%24.9%
通信制の全体28.6%26.2%

公立のほうが「決めないまま」が12ポイント高くなっています。

理由は統計には書かれていません。ただ、公立の通信制は昔から働きながら学ぶ人を受け入れてきました。年齢の幅も広い課程です。

卒業してすぐ進学や就職をしない人が多くても、不思議ではありません。

ここで大事なのは、「通信制の平均」を自分の見込みだと思わないことです。学校ごとに数字は違います。聞けば答える学校もあります。

「大学等28.6%」の6人に1人は、大学の通信教育部

大学等に進んだ人のうち、15.1%は通信教育部でした。3,982人です。

全日制・定時制では0.1%でした。桁が違います。

県によっても差があります。進学者に占める通信教育部の割合は、沖縄が37.0%、茨城が29.0%でした。

一方、山梨は0.4%でした。

通信教育部そのものは悪い選択ではありません。学費は安く、働きながら学べます。ただ、学校どうしの「大学進学率」は、通信教育部を含めるかで見え方が変わります。

詳しくは通信制高校から大学進学は難しい?に書きました。

「終わり」と思う理由は3つ。順に確かめる

大学に行けない、就職できない、周りの目。だいたいこの3つです。

1つずつ見ます。

理由1「大学に行けない」→ 2割が進学。10年で2.6倍に増えた

通信制から大学に進む人は、この10年で約2.6倍に増えました。下の表のとおりです。

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年度 大学に進んだ人 大学進学の割合 進路を決めないまま卒業
2015年度6,974人13.5%41.1%
2020年度8,446人13.9%33.3%
2024年度17,917人21.2%28.2%

「通信制からは大学に行けない」は、10年前のイメージです。ただし、全日制の6割とは差があります。

なお、この表の「大学に進んだ人」は大学・短大に限った数え方です。最初の表の28.6%は、通信教育部や専攻科を含む国の区分です。数え方が違います。

理由は、通信制の課題が「卒業のため」のものだからです。大学受験の勉強にはなりません。

受験勉強の場所を別に作れるかどうかで、変わります。あとの節で書きます。

理由2「就職できない」→ 5人に1人が就職。履歴書は「高等学校 卒業」

通信制を卒業した人の約2割が、就職しています。高校全体で見た就職の割合より、少し高いくらいです。

履歴書の学歴には「◯◯高等学校 卒業」と書きます。通信制も、全日制と同じ「高校卒業」です。「通信制」と書き足す決まりはありません。

採用する側からどう見えるかは、あとの節で書きます。

理由3「周りの目」→ 高校生の10人に1人が通信制

通信制に通う高校生は、国の最新の速報で31万1,792人です。過去最多でした。

高校生のおよそ10人に1人にあたります。

10人に1人が選ぶ学校を「珍しい」と見る人は、年々減っています。気になる気持ちは、残るかもしれません。ただ、数字の上では少数派ではありません。

ほかにも数字があります。通信制に入った人のうち、中3のとき不登校だった人は57%です。半分より多いです。

この数字と学校の選び方は通信制高校はやめとけ? 言われる理由5つを数字で確かめて、やめたほうがいい学校の見分け方に書きました。

「偏見」や「見下される」が気になるとき

通信制に偏見を持つ人がいるのは、昔の姿の印象が残っているからかもしれません。

国の資料によると、通信制はもともと、働くために全日制へ進めない若者の学校でした。いまは、全日制から転入する人や不登校を経験した人など、生徒の姿が変わっています。

高校生全体が減るなかで、通信制だけが増えています。増えた理由と歴史は、通信制高校ってどんな感じ?に書きました。

人の見方は、数字では変えられません。ただ、履歴書の学歴も、大学の受験資格も、全日制と同じ「高校卒業」です。見られ方より先に、卒業と次の進路を固めるほうが、あとで効きます。

本当に気をつけること:卒業できるかどうか

通信制で起きる失敗は「卒業しても終わり」ではありません。「卒業できない」ほうです。ここは正直に書きます。

高校全体で、途中でやめる人は在籍者の1.4%です(2024年度)。

通信制だけを調べた文部科学省の委託調査では、1校あたり平均4.2%でした。

ただし、学校によって0%から25%まで幅があります。

大事なのは平均より、この幅です。同じ通信制でも、学校によってこれだけ違います。学校の選び方で、卒業できるかどうかが変わるということです。

やめる理由でいちばん多いのは「学校が合わない」です。次が「進路を変える」です。勉強についていけないより、通う形が合わないほうが多いのです。

もう1つ数字があります。高校で不登校になった人のうち、途中でやめた人は15.6%です。

行けない学校に籍を置くより、通える学校に移るほうが卒業に近いこともあります。転入は「終わり」ではなく、卒業するための手段です。

学校を見分けるには

見分ける印は3つです。

通う回数が自分に合っているか。相談できる人がいるか。卒業した人数とやめた人数を、学校が答えるか。

入学前に学校へ聞く5つの質問は、通信制高校はやめとけ? 言われる理由5つを数字で確かめて、やめたほうがいい学校の見分け方にまとめました。

注意

注意:「必ず卒業できる」「卒業率100%」を前に出す学校は、確かめる項目が残っています。契約の前に、卒業した人数とやめた人数を聞いてください。

就職のとき、通信制卒はどう見られるか

この節だけは、運営者が採用の現場に20年いる立場で書きます。書くのは「働く場面でどう見えるか」だけです。学校選びや勉強法には広げません。

採用の現場では、履歴書の学歴で全日制か通信制かを見ていません。「高等学校 卒業」なら高卒です。

学校名で通信制と分かることはあります。それを理由に落とす会社は、中途採用や一般の応募では見たことがありません。

面接で聞かれるのは「なぜ通信制なのか」ではありません。「高校のあいだ、何をしていたか」です。

アルバイト、資格の勉強、家の手伝い、好きなことへの取り組み。どれでも構いません。何もしていない時期があっても、そのあと始めたことを1つ話せれば足ります。

不利になる場面も、1つあります。高校の新卒採用には、学校が会社に生徒を推薦する枠があります。

この枠は、全日制の進路指導室を通す仕組みが中心です。通信制でもこの枠がある学校はありますが、求人の数は少なめです。

使いたいなら、入学前に「学校の推薦で就職した人はいるか」を聞いてください。ハローワークや求人サイトから自分で応募するなら、この差はありません。

高卒認定との違い

高卒認定(高等学校卒業程度認定試験)に合格すると、大学や専門学校を受験できます。就職や資格の試験でも、高卒と同じ扱いです。

ただし、学歴は「高校卒業」にはなりません。履歴書には「高卒認定 合格」と書きます。

通信制を卒業すれば「高等学校 卒業」です。履歴書で迷わないという点では、通信制を卒業するほうが分かりやすい道です。

高校を辞めた人のその後は、高校中退してよかった?にまとめました。

大学に行きたい人へ:受験勉強の場所を別に作る

通信制のレポートやスクーリングは、卒業のためのものです。スクーリングは、学校に行って受ける授業のことです。大学入試の範囲と量には足りません。

全日制では、授業がそのまま受験対策になります。通信制では、自分で場所を作る必要があります。

塾、オンラインの個別指導、通信制高校の大学進学コース。選べるものは増えています。

どれを選ぶかより先に、決めることがあります。高2までに「大学に行く」と決めて、場所を確保することです。ここが、大学に進んだ2割と、進まなかった人の差です。

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学費の心配:2026年度から、支援金に所得の制限がなくなった

親御さんが読んでいるかもしれないので、お金のことも短く書きます。

高校の授業料を国が支援する制度が「就学支援金」です。2026年度から、所得の制限がなくなりました。通信制も対象です。

学校 支援の上限(1年)
私立の通信制33万7,200円
私立の全日制45万7,200円
公立11万8,800円

申請は学校を通じて行います。案内が来たら、期限内に出します。

支援は授業料から引かれる形です。施設費、教材費、サポート校の費用は対象外です。

「授業料は支援されても、ほかの費用は残る」と考えておきます。それでも、学費だけで「終わり」になることは、制度の上ではなくなりました。

「行ってよかった」は、国の統計にはない

「通信制に行ってよかったか」を、国は数えていません。満足度の全国の統計は、ありません。

民間の会社のアンケートは見つかりますが、答えた人の集め方が分かりません。この記事では使いません。

代わりに確かめられるのは、2つです。

  1. 卒業したあとの進路。最初の表のとおり、約74%が進学か就職をしています
  2. 学校が公表している、生徒の評価。通信制高校は、学校の自己評価を行って公表することになっています

たとえば、長野県上田市のさくら国際高校の例です。学校自己評価に、生徒の授業アンケートの結果が書かれています。

「約8割の生徒が学校に満足」という内容です。1つの学校の、学校自身による評価です。

候補の学校には「生徒アンケートの結果を公表していますか」と聞いてください。答えが返る学校のほうが、比べやすくなります。

まとめ:この3つが「はい」なら、進路はふさがらない

通信制で進路がふさがるかどうかは3つで決まる。卒業まで通えそうか、卒業後に何をするか高2までに決めるか、大学に行くなら受験勉強の場所が別にあるか。3つとも「はい」なら通信制でも進路はふさがらない
3つとも「はい」なら、通信制でも進路はふさがりません。「いいえ」があれば、そこから手をつけます。
  1. 卒業まで通えそうか。登校の回数、会場、学費が自分に合っているか。合わなければ、学校を選び直すのが先です。
  2. 卒業したあと何をするか、高2までに決めるか。大学、専門学校、就職。仮でいいので決めておくと、進路を決めないまま卒業することを避けられます。
  3. 大学に行くなら、受験勉強の場所が別にあるか。行かない人は、ここは「はい」です。

3つ全部を今日決める必要はありません。1つでも「はい」にできそうなものから、手をつけてください。親御さんが読んでいるなら、本人に聞く順番も同じです。

出典

  • 文部科学省「令和8年度学校基本調査の公表について(速報)」(2026年8月26日)。高等学校(通信制)311,792人、過去最多
  • 文部科学省 協力者会議「広域通信制高等学校 基礎資料1」(2016年)。通信制の成り立ちと生徒像の変化
  • さくら国際高等学校「令和6年度 学校自己評価」(生徒による授業アンケートで約8割の生徒が学校に満足)
  • 高等学校通信教育規程 第13条(自己評価の実施・公表)
  • 文部科学省「令和7年度学校基本調査」卒業後の状況調査(高等学校 通信制)表297「状況別卒業者数」(2025年12月26日公表、e-Stat)。令和6年度間=2025年3月卒業者91,809人の内訳、公立9,443人・私立82,366人の別、大学等進学者のうち通信教育部への進学者3,982人、都道府県別
  • 文部科学省「令和7年度学校基本調査」卒業後の状況調査(高等学校 全日制・定時制)表283「状況別卒業者数」(同上)。全日制・定時制929,157人の内訳、大学等進学者582,042人と通信教育部712人
  • 文部科学省「令和6年度学校基本調査」同表297。令和5年度間=2024年3月卒業者84,450人の内訳
  • 文部科学省「学校基本調査」各年度。通信制課程の卒業者の進路と生徒数。集計はリクルート進学総研「高校の通信制課程 その現状と卒業生の進路変化」(2025年4月)
  • 文部科学省「令和7年度学校基本調査」(2025年12月26日公表)。高校卒業者全体の就職の割合(13.8%)
  • 文部科学省「令和6年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(2025年10月29日公表)。途中でやめた人の数(44,571人・1.4%)と理由、高校の不登校生徒67,782人のうち中途退学15.6%
  • 文部科学省委託調査「定時制・通信制の課程を置く高等学校について(令和5年度)」。通信制の1校あたり退学者割合(令和4年度間・平均4.2%、0〜25%)と理由
  • 文部科学省「令和7年度通信制高等学校実態調査に関する調査結果について」(2026年4月21日公表)。学校数323校、入学者のうち中3で不登校だった人の割合57%
  • 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(2026年6月16日)。支給上限額
  • 文部科学省「高等学校卒業程度認定試験」。合格者の扱い
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杉野 一樹(ペンネーム)
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不登校・進路情報編集者
「みちほどき」運営者。 不登校や学校に行きづらくなった子どもと保護者に向けて、出席扱い、学習支援、フリースクール、通信制高校、高卒認定、進学・就職などの情報を発信しています。 専門家や当事者としてではなく、文部科学省や自治体、学校などが公開する情報を確認し、制度や選択肢をわかりやすく整理することを大切にしています。 「学校に戻る」だけではない、その子に合った次の道を考えるための情報サイトを目指しています。
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