不登校の子に親ができること|「原因さがし」より先に、家で見えている不調を学校に渡す。国の三者調査でわかったズレ
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子どもが学校に行かなくなると、親はまず理由を知りたくなります。本人に聞いても「わからない」と言われ、学校からは「無気力・不安のようです」と説明される。そこで止まってしまう方に向けて書きます。
先に答えです。親の役割は、原因を突き止めることではありません。家で見えているものを、学校に渡すことです。
国が同じ子について先生・本人・保護者の三者に聞いた調査があります。そこには、家と学校で見えているものが大きく違うことが数字で出ていました。
- 体調・気分・睡眠の不調を挙げたのは本人と保護者が7〜8割。同じ子について先生が挙げたのは2割弱
- 「無気力・不安」は主たる要因の55.3%。象徴的なきっかけが見えない時に選ばれやすいという指摘がある
- 親がやることは2つ。家で見えていることを記録にして渡すことと、学校から出にくい選択肢を親から聞くこと

先に答え:親の役割は、家で見えているものを学校に渡すこと
文部科学省の委託調査に「不登校の要因分析に関する調査研究」があります。2024年3月に公表されました。同じ子どもについて、担任の先生と本人と保護者に別々に聞いた調査です。
そこで分かったのは、三者が見ているものが違うということでした。とくに体調や気分、睡眠の不調は、家では見えていて、学校では見えていません。
先生が見えていないのは、先生が悪いからではありません。先生が見ているのは教室にいる時間の子どもで、朝起きられない姿や、夜眠れない姿は見えないからです。
だから親が渡さないと、学校の記録には残りません。原因を突き止めるより先に、この受け渡しをするほうが早く動けます。
数字:同じ子を見ていても、先生・本人・親で見えているものが違う
調査の対象は、小学3年から高校1年だった子どもとその家庭、担任の先生です。
学年は、令和4年度のものです。
三者の比較に使ったのは、次の回答です。
- 先生:1,424人
- 本人:239人
- 保護者:200人
「学校を休み始めたきっかけ」として挙げた割合を並べます。
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| 項目 | 先生 | 本人 | 保護者 |
|---|---|---|---|
| 不安・抑うつの訴え | 19.0% | 76.5% | 78.4% |
| 居眠り、朝起きられない、夜眠れない | 8.3% | 70.3% | 74.7% |
| 体調不良の訴え | 18.5% | 68.9% | 76.5% |
| 教職員への反抗・反発 | 3.5% | 35.9% | 44.7% |
| いじめ被害 | 4.2% | 26.2% | 29.2% |
| 感覚の過敏さ | 14.1% | 40.3% | 38.9% |
| 学業の不振 | 41.2% | 47.0% | 35.9% |
| 宿題ができていない等 | 40.5% | 50.0% | 37.7% |
心身の不調は本人・親の7〜8割、先生は2割弱
表の上の三つを見てください。心と体の不調は、本人と保護者の7〜8割が挙げています。
先生の回答は、2割弱です。
いじめ被害や、先生との関係も差が大きい項目です。本人が26.2%と答えたいじめ被害を、先生は4.2%しか挙げていません。
一方で、学業の不振と宿題は三者の答えが近いです。学校から見えている入口は「勉強」です。家から見えている入口は「体と気持ち」です。
つまり、勉強の話だけで面談が終わるのは自然なことです。体と気持ちの話は、親が持ち込まないと出てきません。
「無気力・不安」と説明されたときの読み方
学校から「無気力・不安が主な要因です」と説明されることがあります。この調査でも、主たる要因として「無気力・不安」を挙げた回答が55.3%でした。
報告書は、この回答について気になる指摘をしています。いじめや友人関係のトラブルなど、はっきりしたきっかけがない場合に選ばれやすい可能性がある、というものです。
実際、「不安・抑うつの訴え」に当てはまる子の割合を見ると、無気力・不安とされた群は18.4%でした。それ以外の群の19.3%より低い結果です。
無気力・不安という言葉は、気持ちの状態を測って選ばれているわけではありません。
だから「無気力・不安」と言われたときは、「先生から見える範囲に理由がなかった」と読み替えてください。本人に理由がないという意味ではありません。
親がやること1:家で見えていることを記録にして学校に渡す
渡すものは3つで足ります。長い手紙は要りません。
- 睡眠:起きた時刻と寝た時刻を1週間分。朝つらい日はどの時間帯か
- 体調:頭痛や腹痛が出る場面と回数。病院にかかったかどうか
- 本人の言葉:口にした場面を、そのままの言葉で
大事なのは、解釈を足さないことです。「たぶん友だち関係だと思う」ではなく、「金曜の夜に『月曜が来るのが嫌だ』と言った」と書きます。そのほうが学校は動けます。
紙かメールで残る形にしてください。口頭で伝えたことは、担任が代わると引き継がれないことがあります。
出席の扱いや成績への反映を相談するときも、この記録が土台になります。手続きは不登校の「出席扱い」に書きました。
親がやること2:学校から出にくい選択肢を、親から聞く
同じ調査で、先生に「休んでいる間にどんな対応をしたか」を聞いています。学校がよくやることと、あまり出てこないことがはっきり分かれました。
| 対応 | 実施した割合 |
|---|---|
| 学校内に別室登校できる環境の整備 | 73.4% |
| プリントの配布など紙の学習支援 | 71.7% |
| スクールカウンセラー等との面談 | 38.1% |
| 教育支援センターなど学校外の機関の紹介 | 37.4% |
| オンラインを活用した学習支援 | 30.8% |
| 就学援助など経済的支援の紹介 | 13.2% |
別室登校とプリントは7割の学校が出しますが、学校外の場所とオンラインは3割台です。
家庭訪問は「ほとんどない」が41.0%でした。
保護者側の評価も同じ方を向いています。学習支援について「実施されず残念」などと答えた保護者は、オンラインで60.2%、それ以外で70.9%でした。
つまり、学校外の選択肢とオンラインは、親から聞かないと出てこないことが多いということです。面談では次の2つを聞いてください。
- 教育支援センターは、この地域にありますか。見学はできますか
- オンラインの教材や授業は、この学校で使えますか。出席の扱いはどうなりますか
教育支援センターの探し方は不登校の「支援センター」はどこ?に、公的な支援の全体像は不登校の「支援」に書きました。
本人が「戻りやすかった」と答えたこと。声がけは2番目
同じ調査で、休んでいた本人に「どのようなことがあれば学校に戻りやすかったと思うか」を聞いています。
| 答え | 割合 |
|---|---|
| 友だちからの声がけ | 36.8% |
| 家族からの声がけ | 23.0% |
| 個別に勉強を教えてもらえること | 22.6% |
| カウンセラーやスクールソーシャルワーカーと話す | 11.7% |
| 先生とインターネットや電話で話す | 9.2% |
| 先生の家庭訪問 | 7.1% |
家族からの声がけは2番目です。先生の家庭訪問の7.1%より、ずっと高い割合でした。
ここは読み方に気をつけてください。戻ることを目標にする話ではありません。本人が答えた「あると助かるもの」の中に、親が持っているものが入っているという意味です。
3番目の「個別に勉強を教えてもらえること」も、家から動かせる部分があります。勉強の遅れをどう埋めるかは不登校の中学生の勉強は何をする?に書きました。
小学生の場合は、家での時間の組み立てが先です。不登校の小学生、家での過ごし方に、起きる時間から決める方法を書きました。
不登校を経験した大人が「当時ほしかった手助け」は、不登校の小学生の気持ちで見ました。1位は、気持ちを言葉にする方法です。
相談の入口は家族が61.7%。3割は誰にも相談していない
本人に「学校に行きづらいと感じてから休み始めるまでに、誰かに相談したか」を聞いた結果です。
本人向けの入口は、学校に行きたくないと思ったらにまとめました。
| 相談した相手 | 割合 |
|---|---|
| 家族 | 61.7% |
| 学校の先生 | 28.2% |
| 保健室の先生 | 20.2% |
| 友だち | 19.8% |
| カウンセラー、スクールソーシャルワーカー | 18.1% |
| 電話相談やSNS相談の相談員 | 5.2% |
| 誰にも相談しなかった | 31.5% |
家族はいちばん相談される相手です。一方で、31.5%は誰にも相談していませんでした。
だから「何も話してくれない」と感じているなら、それは珍しいことではありません。3人に1人は、誰にも言えないまま休み始めています。
このとき、電話やSNSの相談窓口を本人に伝えておくのは意味があります。顔を合わせずに話せる場所が要る子が、一定数いるからです。
親自身の相談先は不登校の親の会はどこにある?にまとめました。
焦らなくていい数字:翌年度に4分の1が毎日登校している
この調査は、令和4年度に不登校だった子の翌年度の様子も追っています。
約4分の1が、ほとんど毎日登校していました。
半数以上は、週2〜3日以上通っていました。
休んだ年の次の年に、状況が変わる子は少なくありません。
ただし、欠席が90日以上だった子は、75%が翌年度も登校できていませんでした。日数が長くなるほど、学校だけでは戻りにくくなるということです。
だから90日に近づいてきたら、学校の外の場所や、通信制を含む進路も並べて考え始めてください。高校の選び方は不登校でも高校受験はできる?に書きました。
家庭の事情も数字に出ています。ひとり親や共働きの家庭は、相談や指導が届きにくい傾向が報告されています。これは家庭を責める数字ではなく、こちらから取りにいかないと支援が届きにくいという意味です。

注意:記録は本人に見せられる内容にしてください。本人に断りなく細かく報告していると分かると、家で話せることが減ります。「体調のことを学校に伝えておくね」と一言だけ伝えておくと足ります。
まとめ
- 心と体の不調は、本人と保護者の7〜8割が挙げ、同じ子について先生が挙げたのは2割弱。家で見えていることは伝えないと届かない
- 「無気力・不安」は主たる要因の55.3%。象徴的なきっかけが見えない時に選ばれやすいという指摘がある
- 親がやることは2つ。睡眠・体調・本人の言葉を記録にして渡すことと、教育支援センターとオンライン学習を親から聞くこと
出典
- 文部科学省委託事業「不登校の要因分析に関する調査研究」報告書および結果の概要(2024年3月公表)。令和4年度に小学3年から高校1年だった児童生徒1万9,005名とその保護者1万2,140名、担任教師(児童生徒2万4,943名分)が対象。三者比較は教師1,424名・不登校の児童生徒239名・保護者200名
- 同調査より、きっかけ要因の三者比較(不安・抑うつ19.0%/76.5%/78.4%、居眠り・朝起きられない・夜眠れない8.3%/70.3%/74.7%、体調不良18.5%/68.9%/76.5%、いじめ被害4.2%/26.2%/29.2%ほか)
- 同調査より、主たる要因が「無気力・不安」とされた児童生徒750名(1,357名中55.3%)、象徴的なきっかけ要因がない場合に選ばれやすい可能性の指摘、不安・抑うつの訴えは無気力・不安群18.4%・それ以外19.3%
- 同調査より、学校の対応(別室登校73.4%、紙の学習支援71.7%、スクールカウンセラー等との面談38.1%、学校外機関の紹介37.4%、オンライン学習支援30.8%、就学援助の紹介13.2%、家庭訪問「ほとんどない」41.0%)、保護者の評価(学習支援について「実施されず残念」等の合計がオンライン60.2%・それ以外70.9%)
- 同調査より、本人の相談相手(家族61.7%、学校の先生28.2%、誰にも相談しなかった31.5%ほか)、学校に戻りやすかったこと(友だちの声がけ36.8%、家族の声がけ23.0%、個別に勉強22.6%ほか)、翌年度の登校状況、欠席90日以上の場合の75%、家庭的な背景要因と相談・指導の届きにくさ

