通信制高校

通信制高校の学費が安いのはどこ? 25都道府県を調べたら、県の上乗せが通信制に出るのは7つだけだった

杉野 一樹

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「学費がいちばん安い通信制高校はどこですか」。よく聞かれる質問です。

先に答えます。その質問には、学校名では答えられません。安さを決めているのは、学校ではなく住んでいる都道府県だからです。

このサイトで25都道府県を調べました。県独自の授業料の上乗せが通信制にも出るのは、7つだけでした。

この記事で分かること
  • 25都道府県のうち、県の授業料上乗せが通信制に届くのは7。11は通信制に出ない
  • 同じ授業料の学校でも、神奈川と埼玉では年14万2,800円の差が出る
  • 私立で自己負担が出る線は「1単位1万3,668円」。公立は1単位100円から336円
  • サポート校は就学支援金の対象外なので、足すと桁が変わる
学校に行かなくなったあとの4つの段階。いま、学び直し、進路、その先。この記事は進路の段階
学校に行かなくなったあとの4つの段階。この記事は「進路」の、お金の話です。

先に答え:安さを決めるのは学校ではなく県

2026年度から、国の就学支援金に所得制限がなくなりました。

私立通信制は、年33万7,200円までです。

授業料が単位ごとの学校なら、単位あたり1万3,668円までです。

ここまでは全国どこでも同じです。差がつくのは、この上に県が乗せるかどうかです。

そして県の制度は、通信制を対象にしていないことのほうが多いのです。

学費の全体像は通信制高校の学費はいくら?にまとめました。この記事は「どこで差がつくか」だけを書きます。

25都道府県を3つに分けた

このサイトの都道府県別の記事で調べた25都道府県を、県独自の授業料上乗せの扱いで分けました。

県独自の授業料上乗せの扱い 都道府県
通信制にも出る(7)愛知、神奈川、大阪、京都、奈良、新潟、広島
授業料には出ないが、入学金や通学費に出る(6)岐阜、三重、山梨、群馬、熊本、沖縄
通信制には出ない(11)埼玉、福岡、兵庫、静岡、北海道、千葉、宮城、山口、茨城、徳島、宮崎
県の案内に明記がなく要確認(1)岡山

授業料の上乗せが通信制に届くのは、25のうち7です。

割合にすると28%です。

兵庫は交付要綱に「通信制を除く」とはっきり書いています。千葉は2026年度で廃止し、経過措置だけが残っています。

出る県ほど、条件は細かい

「出る7県」も、誰でも使えるわけではありません。対象校の条件がかなり絞られています。

  • 神奈川:本部校が県内にある私立通信制5校だけ
  • 京都:京都府が認可した私立高校だけ
  • 奈良:県が認可した4校の本校と、県内の面接指導施設
  • 大阪:府が指定した「就学支援推進校」

つまり「キャンパスが県内にある」だけでは対象にならない県が多いということです。広域の学校を選ぶときは、ここを必ず確かめてください。

キャンパスと本校の違いは近くの通信制高校はどう探す?に書きました。

同じ学校でも、県が変わると年14万2,800円違う

具体的な数字で見ます。神奈川の対象5校に通う場合です。

国の支援に、県の上乗せが加わります。

  • 国:33万7,200円
  • 県:14万2,800円

合計で年48万円まで授業料が支援されます。これは全日制と同じ上限です。

一方、埼玉・福岡・兵庫では国の33万7,200円だけです。

同じ授業料の学校に通っても、年14万2,800円の差が出ます。

3年間なら、42万円を超える差になります。学校を比べる前に、住んでいる県の制度を調べたほうが早いのはこのためです。

奈良はもっと珍しい型です。所得制限がなく、年32万1,000円まで出て、国が見ない施設整備費まで対象になります。

上乗せの有無より、「誰が対象か」の線引きのほうが効く

その後、47都道府県すべての県別記事を書きました。調べていて、もうひとつ大きな分かれ目が見えてきました。

制度があるかどうかより、「誰を対象にするか」の線をどこに引いているかです。

線の引き方は3つに分かれました。

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線の引き方 意味 確認した県
保護者の住所で決まる学校が県外でも使える石川、長崎、佐賀、山形、秋田、高知、鳥取
学校が県内かで決まる本校が県外だと外れる福島、富山、香川
通信制そのものを外す課程ごと対象外島根、兵庫

この違いは、通信制では決定的に効きます。通信制のキャンパスは、本校が県外という形が多いからです。

「学校が県内か」で切る県は、こう書いている

香川県の入学金軽減補助は、対象校の欄にこう書いています。

「他の都道府県が認可している広域通信制高校及びその通信教育連携協力施設は対象外となりますので、ご注意ください」

島根県の私立高校授業料減免は、対象が「私立高等学校及び私立専修学校高等課程(通信制課程を除く)」です。課程そのものが外れています。

県内で選べる学校は島根の通信制高校にまとめました。

福島県は制度のページの冒頭に「福島県内に本校がある私立学校の生徒を対象としていますので、ご注意ください」と書いています。

実際に何が起きるか。佐賀県内の拠点25か所のうち、本校が佐賀県内にあるのは1か所だけでした。

もし佐賀が香川と同じ線の引き方なら、24か所が外れることになります。

佐賀は保護者の住所で見ているので、そうはなりません。詳しくは佐賀の通信制高校と香川・高松の通信制高校に書きました。

給付金は「自分で県に出す」ことがある

奨学給付金のほうは、多くの県が保護者の住所で判断しています。学校の場所は問いません。

ただし、申請の出し先が変わります。

秋田県のページには、こう書かれています。「通信教育連携施設(キャンパス等)が県内にあっても、本校は県外である場合がありますので、ご注意ください」。

判断されるのは本校の所在地です。本校が県外なら「県外の高校に在学している」扱いになり、学校ではなく県に直接出します。

期限も県ごとに違いました。

県 期限
秋田9月30日
佐賀9月上旬
石川10月30日
山形11月30日

学校からの案内を待っていると、間に合わないことがあります。本校が県外の学校を選ぶなら、入学前に「給付金はどこに出しますか」と確認してください。

入学した年は、2回申請する県がある

もうひとつ見落としやすいのが、新入生向けの前倒し給付です。

和歌山、石川、長崎、佐賀で確認しました。4月から6月分を先に受け取れる制度です。

前倒しだけ受け取って、通常の申請を忘れると7月分以降が出ません。入学した年は2回申請する、と覚えておいてください。

鳥取は令和8年度から、原則として電子申請になりました。

  • 期限:9月30日
  • 最終期限:11月30日

こうした条件は毎年変わります。最後は必ず、入る学校か県の窓口に確かめてください。

私立で自己負担が出る線は「1単位1万3,668円」

県の上乗せがない18の道府県では、計算はもっと単純になります。

私立で自己負担が出るかどうかの分かれ目は、単位あたり1万3,668円です。

これが2026年度の就学支援金の上限(単位制)です。

1単位の授業料がこの額以下なら、授業料は実質0円になります。超える学校では、超えた分がそのまま自己負担です。

たとえば単位料が1万5,000円の学校で考えます。

差額は、単位あたり1,332円です。

年に25単位取ると、自己負担は約3.3万円です。

単位数を減らせば安くなるのか

私立は単位制なので、取る単位数で授業料が決まります。では少なく取れば安いのでしょうか。

1年あたりは安くなりますが、総額は変わりません。卒業には74単位以上が必要だからです。

少なく取れば、そのぶん卒業までの年数が延びます。1年あたりの負担を軽くしたいときの選択肢だと考えてください。

ただし施設費や諸会費は、単位数と関係なく毎年かかる学校が多いです。年数が延びれば、その分は増えます。

公立の授業料は1単位100円から336円

公立はもともと桁が違います。このサイトで調べた範囲では、こうなっていました。

県 1単位あたりの授業料
山口(松風館)100円
岡山(操山)月額110円
茨城(水戸南)180円
岐阜・沖縄310円
熊本・奈良336円

いずれも就学支援金の対象なので、授業料は実質0円になります。

残るのは教科書代と諸会費で、年3〜4万円が目安です。

ただし公立は「安いから選ぶ学校」ではありません。入学の時期が決まっていて、通う曜日も決まっています。

公立の中身は公立の通信制高校はどんなところ?に書きました。

授業料以外にも、もらえるお金がある

見落とされやすいのが「高校生等奨学給付金」です。授業料ではなく、教科書代や教材費に使える給付です。

国の制度なので全国にあります。返す必要はありません。

通信制の場合、非課税世帯で年5万2,100円です。

  • 生活保護世帯:年5万2,600円
  • 所得による区分:年1万3,030円〜1万7,370円

区分は、住民税の額で決まります。

公立なら教科書代と諸会費が年3〜4万円なので、この給付でほぼ賄えます。申請の窓口は学校か県です。

「学費が高い」のはどこか

逆の探し方をする方もいます。「学費が高い通信制はどこか」です。

授業料だけで見ると、高いほうの幅はそれほど広くありません。就学支援金の上限(単位あたり1万3,668円)を超える分が自己負担なので、差が出るのはその超過分だけだからです。

桁が変わるのは、次の章のサポート校です。「学費が高いランキング」を作ると、上位はサポート校の費用を足した金額になります。

サポート校を足すと桁が変わる

見落としやすいのがここです。サポート校は学校ではないので、就学支援金の対象になりません。

通信制の授業料が0円になっても、サポート校の費用は全額が自己負担です。年に数十万円かかることもあります。

パンフレットの「学費」に、サポート校の分が入っているかどうかを確かめてください。別立てになっていることが多いです。

学校の費用とコースの費用を別に載せている例は、ルネサンス高校グループ(通信制)に書きました。

支援金で単位の授業料が0円になっても、補習費などが残る例は飛鳥未来高校(通信制)にあります。

本校スクーリングの宿泊費が別にかかる例は、第一学院高校(通信制)で見ました。

サポート校の役割と見分け方はサポート校とは何かにまとめました。

「学費が安いランキング」が役に立たない理由

検索すると、学費の安い順に並べた記事が出てきます。あの順位は何でできているでしょうか。

学校が公表している単価を並べただけです。県の上乗せは入っていません。だから住む県が変われば、順位も変わります。

サポート校の費用も、入っている記事と入っていない記事があります。同じ学校でも金額の書き方がそろっていません。

だからこの記事では、ランキングを作りません。代わりに、自分の場合の順番を書きます。

安くする順番は3つ

やることは3つで、この順番です。

  1. 住んでいる県の制度を調べる。都道府県の私学担当課のページに「私立高等学校授業料軽減」などの名前で載っています。通信制が対象かどうかを最初に見ます
  2. 公立を候補に入れる。授業料は実質0円で、残るのは年3〜4万円です。通える曜日が合うかを確かめます
  3. 私立なら、1単位の授業料とサポート校の要否を聞く。1万3,668円を超えるかどうかと、サポート校が必須かどうかで総額が決まります

学校説明会で何を聞くかは通信制高校の説明会は何を聞く場所かにまとめました。

学費を計算する前に確かめる5つ。県の上乗せ補助は通信制も対象か、対象校の条件は県内に本校があることではないか、私立なら1単位の授業料は1万3,668円を超えるか、サポート校の費用を別に足したか、学費が安いランキングで決めるのは注意
学校を比べる前に、住んでいる県の制度を調べてください。

よくある質問

Q. うちの県が対象かどうか、どこを見ればいいですか。

A. 都道府県の私学担当課のページです。「通信制」の文字があるかを探してください。

Q. 引っ越せば安くなりますか。

A. 制度上はそうなりますが、対象校の条件も県ごとに違います。学費だけで転居を決める話ではありません。

Q. 県の補助は自分で申請しますか。

A. 多くの県は学校を通して申請します。手続きの窓口は学校に聞いてください。

Q. いちばん安いのは公立ですか。

A. 授業料だけならそうです。ただし通う曜日と入学時期が決まっているので、続けられるかが先です。

Q. サポート校は使わないといけませんか。

A. 学校によります。必須の学校と、任意の学校と、そもそも無い学校があります。

注意

注意:「学費が安い通信制ランキング」を基準にしないでください。学校の公表単価を並べただけで、住んでいる県の上乗せもサポート校の費用も入っていません。同じ学校でも、県が変われば年に十数万円変わります。

まとめ

  • 25都道府県のうち、県独自の授業料上乗せが通信制に届くのは7つ。11は通信制に出ない
  • 同じ授業料の学校でも、神奈川の対象校と埼玉では年14万2,800円の差が出る
  • 私立の分かれ目は1単位1万3,668円。公立は実質0円で年3〜4万円。サポート校は対象外なので別に足す
ネット×リアルで高卒資格+進路実現!KADOKAWA・ドワンゴが贈る通信制高校【N高等学校】

KADOKAWAとドワンゴが運営する広域通信制です。対象は中学3年生から高校生・高校中退の人。資料を請求しても入学の義務はありません。PR

出典

  • 文部科学省「高等学校等就学支援金」。2026年度から所得制限なし、私立通信制は年33万7,200円、単位制は1単位1万3,668円
  • 各都道府県の私学担当課の制度案内・交付要綱。25都道府県の分類は当サイトで実施し、個別の根拠は各都道府県別の記事の出典欄に記載
  • 神奈川県「私立高等学校等生徒学費補助金」。本部校が県内の私立通信制5校、県14万2,800円
  • 大阪府「私立高等学校等授業料支援補助金」。就学支援推進校、1単位1万2,030円まで
  • 奈良県「私立高等学校授業料等軽減補助金」。2026年度から所得制限なし、年32万1,000円、施設整備費等も対象
  • 兵庫県の授業料軽減補助・入学金支援の交付要綱。「通信制を除く」
  • 各県教育委員会・各校の費用案内。公立の1単位あたり授業料(山口100円、岡山 月額110円、茨城180円、岐阜・沖縄310円、熊本・奈良336円)
  • 文部科学省「高校生等奨学給付金」。通信制は非課税世帯 年5万2,100円、生活保護世帯 年5万2,600円、所得割の区分で年1万3,030円〜1万7,370円
  • 学校教育法施行規則 第96条。卒業に必要な単位は74単位以上
  • 高等学校通信教育規程 第3条(学習等支援施設)。サポート校は就学支援金の対象校ではない
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杉野 一樹(ペンネーム)
杉野 一樹(ペンネーム)
不登校・進路情報編集者
「みちほどき」運営者。 不登校や学校に行きづらくなった子どもと保護者に向けて、出席扱い、学習支援、フリースクール、通信制高校、高卒認定、進学・就職などの情報を発信しています。 専門家や当事者としてではなく、文部科学省や自治体、学校などが公開する情報を確認し、制度や選択肢をわかりやすく整理することを大切にしています。 「学校に戻る」だけではない、その子に合った次の道を考えるための情報サイトを目指しています。
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