通信制高校

通信制高校の公立はどこが違う? 学費は年3〜4万円。差が出るのは「入る時期」「登校日」「自分で進める力」の3つ

公立の通信制高校。差はお金ではなく通い方
杉野 一樹

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「公立の通信制なら安い」と聞いて調べ始めた方へ。安いのは本当です。ただ、公立と私立の差はお金ではありません。

先に答えです。公立の通信制は、「決まった日に通える子」が選ぶ学校です。学費は年3〜4万円で済みます。

そのかわり、入る時期と登校する日が決まっていて、レポートは自分で進めます。この3つを確かめてから決めてください。

この記事で分かること
  • 公立の通信制は全国82校。通信制の生徒の2割が通う。授業料は実質0円で、残るのは年3〜4万円
  • 私立との差は3つ。入る時期が決まっている、登校の曜日と回数が固定、郵送のレポートを自分で進める
  • 公立のほうが厚いのは、専任の先生とスクールカウンセラーの体制。生徒層は公立も私立も同じ
学校に行かなくなったあとの4つの段階。いま、学び直し、進路、その先。この記事は進路の段階
学校に行かなくなったあとの4つの段階。この記事は「進路」の、公立か私立かの話です。

先に答え:公立は「安い」より「決まった日に通えるか」で決まる

公立の通信制高校は、都道府県が置く学校です。県ごとに1〜3校です。

授業料は、単位あたり330〜700円です。

国の就学支援金で授業料は実質0円になります。残るのは、教科書代と諸会費です。

学校の公表額で、年3〜4万円です。

ここまでは、どの一覧サイトにも書いてあります。書いていないのは、公立で起きる「差」がお金ではないことです。

差は3つです。

  • 入る時期が決まっている
  • 登校の曜日と回数が固定で、別室やオンラインは原則ない
  • レポートは郵送で、自分で進める

この3つが「できる」なら、公立は費用と先生の体制で私立より有利です。「できない」なら、安さで選ぶと続きません。

公立の通信制はどれくらいある? 全国82校、生徒の2割

文部科学省の学校基本調査(2025年度の速報)から、公立と私立を並べます。

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公立 私立
学校数82校250校
生徒数6万2,009人24万3,212人
生徒の割合20%80%
前年からの増え方1,676人増1万3,458人増

通信制の生徒は、30万5,197人です。

そのうち公立に通うのは、5人に1人です。

増えているのは私立です。公立は1年に3校ずつ増える程度で、学校が近くにあるかどうかで選べる人が決まります。

公立はほぼ全部、自分の県の人しか入れない

私立の通信制には「広域」があります。全国どこからでも入れる学校のことです。

公立はほとんどが「狭域」で、住んでいる県か、隣接する2〜3県までが対象です。

文部科学省の「分かる・見つかる通信制高等学校」に載っている公立81校の区域を、1校ずつ確かめました。

広い区域を持つ公立は、2校だけでした。

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学校 区域 定員/在籍
茨城県立水戸南福島・茨城・栃木・埼玉・千葉1,260/916
大分県立爽風館福岡・熊本・大分1,214/1,214

残りの79校は狭域です。だから「公立は安い」とわかっても、自分の県にあるかどうかで話が終わることが多い、という構造になっています。

例外の2校については、県外に住んでいても候補に入ります。大分の事情は大分の通信制高校に書きました。

学費:授業料は実質0円。残るのは教科書代と諸会費

公立5校の公式資料から、費用を並べます。単位ごとの授業料と、それ以外の費用に分けて見てください。

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学校 授業料 入学時 授業料以外の年額
都立一橋(東京)1単位336円考査料950円、入学料500円教科書2〜3万円、諸会費1,200円程度。合計 約3万7,000円
県立千葉大宮(千葉)1単位330円検査料950円、入学料500円教科書 約2万円、諸会費 約5,000円
県立横浜修悠館(神奈川)平日講座700円、日曜講座350円―教科書1万〜1万5,000円、諸会費6,000円。合計 約3万7,000〜4万2,000円
県立大宮中央(埼玉)受講料は所得が一定以上の世帯のみ入学料500円教科書代・教材費・諸会費は別
府立桃谷(大阪)年 最大9,900円入学料500円教科書等2万円程度。合計 年4万円程度

授業料は、国の支援で0円になります。公立通信制の支援の上限は単位あたり336円で、授業料と同じ額だからです。

残るのは、教科書代と諸会費です。どの学校も年3〜4万円に収まります。

国の制度の全体は通信制高校の学費はいくら?に書きました。

差1:入る時期が決まっている

私立の通信制は、転入を年中受ける学校が多いです。公立は、入る時期が決まっています。

新入学は、多くの県で春の入学者選抜です。秋の入学を置く県もあります。

転入は、県によって条件がつきます。神奈川の厚木清南高校は、転入学を認めるのは特別な事情がある場合だけと公表しています。県外からの転居などです。

多くは、いったん退学してからの編入学になります。

一方で、千葉大宮高校は新入学が年4回、転入が年4回あります。公立の中でも、県で差があります。

いま高校にいて「来月から移りたい」なら、公立は間に合わないことがあります。転入の考え方は通信制高校への転入の記事に書きました。

差2:登校の曜日と回数が固定。別室やオンラインは原則ない

公立の登校(スクーリング)は、曜日と回数が決まっています。

  • 千葉大宮:各学期9回。日・月・火から1日を選ぶ。木曜の補習回が各学期7回
  • 厚木清南:日曜が年18回、火曜が年20回、木曜の夜間が年6回
  • 横浜修悠館:月〜木の平日講座か、日曜講座。科目ごとに選べる
  • 大宮中央:年30日程度。日曜は県内4校の協力校でも受けられる

回数は多くありません。ただ、その日に教室で受けることが前提です。

厚木清南は、別室対応やオンライン授業はしないと公式Q&Aに書いています。教室に入れるかどうかが、公立を選べるかの分かれ目です。

登校の曜日が仕事や通院と重なるなら、私立の「登校日を選べる学校」のほうが合います。

差3:レポートは郵送、自分で進める

公立のレポートは、いまも郵送が主流です。千葉大宮は、発送用と返送用に15円ずつ切手を貼って出します。

評価がEなら再提出です。レポート全部の合格、決まった出席時数、試験の合格の3つがそろって単位になります。

厚木清南は、3年で卒業する条件を公表しています。

レポートを毎週4〜5通と、週に一度ほどの出席です。

3年で卒業できるのは全体の2割程度、とも公表しています。

私立の通学コースやサポート校は、この「進める」部分を人が支えます。そのぶん費用がかかります。

公立で同じ支えになるのは、木曜の補習回や協力校、家で見てくれる人です。ここが用意できるかを、先に考えてください。

ただし公立はいま作り替えの最中

ここまで書いた3つの差には、例外が増えています。公立の通信制が、各地で作り替えられているからです。

このサイトで32の都道府県を調べました。9つの県で、公立通信制の新設・閉課程・引き継ぎが確認できました。

県 何が起きたか
愛知2025年4月にフレキシブルハイスクール4校が開校。公立は6校になった
愛媛2026年4月に県立松山東の通信制課程が北条清新高校へ統合。場所も松山市の北部へ移った
栃木県立宇都宮の通信制課程が2028年度末で閉課程。宇都宮清陵と県北の新校へ引き継ぐ
奈良大和中央が募集停止。2024年4月に山辺高校へ移った
山口2022年に山口松風館が開校。山口高校の通信制を引き継いだ
兵庫網干は全日制が姫路海稜高校に統合されたが、通信制は続いている
岩手杜陵奥州校が2009年開校。県内で最も新しい単位制の学校
福岡博多青松は1997年に修猷館高校から移設して開校した
長野長野西の通信制は2025年度から2学期制。2030年を目標に新校(仮称 長野東スーパーフレックス新校)へ移管予定

新しい型は「平日昼間・週1日から」

変化の中身がはっきり出ているのが愛知です。

旧来の2校(旭陵・刈谷東)は日曜スクーリングです。新しくできた4校は違います。

平日の昼間に、週1日の登校から始められます。しかも同じ学校の昼間定時制や全日制の授業を併修でき、課程を移ることもできます。

群馬の太田フレックスは2学期制で、入学と卒業が年2回あります。神奈川の厚木清南は「フレキシブルスクール」と名乗っています。

太田フレックスを含む県内の状況は群馬の通信制高校にまとめました。

つまり「公立は日曜に月2回」が、もう全部には当てはまりません。

私立も新しい学校が増えている

動いているのは公立だけではありません。調べた範囲では、私立の新設も続いています。

群馬のR高と広島のシンギュラリティ、山口の萩明倫館が2025年に開校しました。新潟青陵と三重の皇學館は2026年の開校予定です。

県ごとの状況は個別にまとめています。たとえば三重の通信制高校、滋賀の通信制高校、鳥取の通信制高校、山梨の通信制高校です。

だから今から選ぶなら、2つ聞く

作り替えの途中なので、確かめることが2つ増えます。

  1. その学校は新しい型か、古い型か。平日に通えるのか、日曜だけなのかで生活が変わります
  2. 卒業までに学校が変わる可能性はないか。栃木のように、閉課程が決まっている学校があります

愛知の事情は愛知の通信制高校、奈良は奈良の通信制高校、山口は山口の通信制高校に書きました。

栃木の閉課程は宇都宮・栃木の通信制高校に、愛媛の統合は松山・愛媛の通信制高校にまとめています。

長野西の移管の予定は、上田市の通信制高校で触れました。

公立のほうが厚いもの:専任の先生とスクールカウンセラー

文部科学省の「令和7年度 通信制高等学校実態調査」に、公立と私立の体制の差が出ています。

2026年4月の公表です。

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公立 私立 株式会社立
専任の先生の割合68.9%40.1%45.5%
スクールカウンセラーに相談できる体制98.8%79.7%80%
定員の半分以上が埋まっている学校71.6%53.3%60%

専任の先生は、公立が7割、私立が4割です。私立は、連携するキャンパスやサポート校で働く先生が多くなっています。

スクールカウンセラーの体制は、公立はほぼ全校です。私立は5校に1校が整っていません。

これは平均です。私立でも体制が厚い学校はあるので、私立を選ぶなら学校ごとに聞いてください。

生徒層は同じ:中3で不登校だった子は公立53.5%、私立56.6%

「公立は不登校の子には向かない」と思う方がいます。同じ調査の数字で確かめます。

2025年度の入学者のうち、中学3年のときに不登校だった生徒の割合を計算しました。

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入学者 うち中3で不登校 割合
公立9,969人5,333人53.5%
私立6万1,200人3万4,663人56.6%
株式会社立6,829人4,465人65.4%

公立も私立も、入学者の半分以上が中3で不登校だった子です。生徒層に差はありません。

ただし年齢は違います。

  • 20歳以上の割合:公立27.7%、私立1.6%

内訳は通信制高校ってどんな感じ?に書きました。

差があるのは、学校の側です。公立は決まった日に来ることを求め、そのかわり専任の先生と相談の体制を置いています。

判断チャート:公立に向くか、3つの質問

公立の通信制高校に向くか3つの質問。決まった曜日に学期9〜10回通えるか、入る時期まで待てるか、郵送のレポートを自分で進められるか。3つともはいなら公立が候補、いいえなら私立を通い方で選ぶか進め方を支える仕組みを先に決める
3つとも「はい」なら公立が候補です。1つでも「いいえ」なら、私立を通い方で選びます。

公立を選ぶ前に聞く3つ。私立を選ぶなら聞く2つ

公立を選ぶなら、学校に聞くのはこの3つです。

  1. 登校の曜日と回数。協力校はあるか。通えない曜日があるなら、ここで分かります
  2. 転入と編入の時期と条件。いま高校にいるなら、転入が認められる条件を先に聞きます
  3. 3年で卒業する人の割合。答えられる学校は、進め方の支えを持っています

私立を選ぶなら、公立との差を埋める2つを聞きます。

  1. 専任の先生の割合と、スクールカウンセラーの体制。平均は公立より低いので、学校ごとに確かめます
  2. 通学コースやサポート校の費用。「進める」支えの値段です

見分け方の全体は通信制高校はやめとけ?の5つの質問に書きました。県ごとの公立は、大阪、埼玉、神奈川、千葉の記事にあります。

注意

注意:「公立は安いから」で決めると、登校日に行けずに止まります。公立で本当に起きる失敗は、費用ではなく「決まった日に行けない」「レポートが進まない」です。3つの質問を先に確かめてください。

まとめ

  • 公立の通信制は全国82校、生徒の2割。授業料は実質0円で、残るのは年3〜4万円
  • 私立との差は、入る時期、登校の曜日と回数、郵送のレポートを自分で進めること
  • 専任の先生とスクールカウンセラーの体制は公立が厚い。生徒層は公立も私立も同じ
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KADOKAWAとドワンゴが運営する広域通信制です。対象は中学3年生から高校生・高校中退の人。資料を請求しても入学の義務はありません。PR

出典

  • 文部科学省「令和7年度学校基本調査」学校通信教育調査(高等学校)表158「年齢別生徒数」(確定値、2025年12月26日公表、e-Stat)。通信制の生徒30万5,197人(公立6万2,008人・私立24万3,189人)
  • 文部科学省「学校基本調査」令和7年度速報(2025年5月1日現在)を学びリンク株式会社が集計(2025年8月30日)。学校数332校(公立82校・私立250校)
  • 文部科学省「令和7年度 通信制高等学校実態調査に関する調査結果について(概要)」(2026年4月21日公表、2025年5月1日時点)。専任の割合、スクールカウンセラー体制、収容定員の充足率、入学者数と中学3年時に不登校だった生徒数。割合はこの記事で計算した
  • 文部科学省委託「定時制・通信制の課程を置く高等学校について(令和5年度)調査報告書」。通信制の転入者割合 平均15.4%、退学者割合 平均4.2%
  • 文部科学省「高等学校等就学支援金・新制度の概要」(2026年6月16日)。公立通信制の支援上限1単位336円
  • 東京都立一橋高等学校 通信制「学費について」(2026年度)。受講料336円、考査料950円、入学料500円、年約3万7,000円
  • 千葉県立千葉大宮高等学校「通信制のしおり」(2026年度)抜粋、Q&A、令和8年度入学の方へ。千葉県教育委員会「県立高校の入学料・授業料等」(令和8年度)
  • 神奈川県立横浜修悠館高等学校「よくある質問」「講座の形態」、神奈川県立厚木清南高等学校「通信制の特色」「よくあるQ&A」
  • 埼玉県教育委員会「令和8年度 高等学校定時制・通信制入学案内」(県立大宮中央高校)、大阪府立桃谷高等学校 通信制の課程 公式サイト(授業料は令和3年度参考)
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杉野 一樹(ペンネーム)
杉野 一樹(ペンネーム)
不登校・進路情報編集者
「みちほどき」運営者。 不登校や学校に行きづらくなった子どもと保護者に向けて、出席扱い、学習支援、フリースクール、通信制高校、高卒認定、進学・就職などの情報を発信しています。 専門家や当事者としてではなく、文部科学省や自治体、学校などが公開する情報を確認し、制度や選択肢をわかりやすく整理することを大切にしています。 「学校に戻る」だけではない、その子に合った次の道を考えるための情報サイトを目指しています。
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